平田恵子の ABC南風 　　　　 Vol. 17　Quran (クルアン＝イスラム教の聖典）

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サヌールビーチからデンパサールを経由して、ウブドに向かう途中でのこと。車のフロントガラスにぽつりと雨粒が落ちたかと思ったら、たちまちにして雨はバケツを引っくり返し続ける魔人のようになって、車の屋根を、フロントガラスを打ち叩き始めた。ワイパーがいくら動いても、滝のように飛沫をあげてガラスを流れる雨で先が見えないほどに。そして、この状態でも、前後にも車が車間距離なく走っていて、しかもかなりのスピードを出している。 　私はちょっと恐くなって、”Stop! Terlalu bahaya! Hentikan mobil di pinggir jalan. （止めて！危なすぎるよ。ちょっと、脇に車とめてよ）”と叫んでしまった。バリで交通事故に巻き込まれたらたいへんだし、こんなことで死にたくもない。 　と、運転手は、全く平気な感じで、”Tidak apa-apa. Terbiasa karena musim hujan.（大丈夫ですよ。いつものことですよ。雨季（10月〜3月）ですしね）”と笑顔で切り返してきたが、ともかく、死ぬのは日本でと決めている私は、強引に車を止めてもらった。 　 ５分も路肩に止まっていると、あたりが急に明るくなり雨も小降りになってきた。すると、どこからか小雨のベールの向こうから、少し哀愁を帯びた Quran（コーラン）が響いてくるではないか。そういえば、ちょうど金曜の正午。イスラム教徒たちが、モスクに集まって集団礼拝をしている時間である。 　バリ島は住民の90％がバリ・ヒンズー教の信者（バリ人の条件でもある）なのだが、豊なバリには他の島からの出稼ぎ人などが増えてきて、モスクもデンパサールなどイスラム住民が多く集まる何か所かに建てられている。ちなみに、インドネシア人口は2億1000万人で世界第4位。その90％がイスラム教徒で、世界一のイスラム国家なのだ。 　こういう命びろいしたようなときに聞くコーランはしみじみと心に滲みてありがたく、なんだか神に助けられた子羊の気分になった私だった。 　　★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 　　　平田恵子さんの詳しいプロフィールについてはこちら♪ 　　　>>>http://www9.ocn.ne.jp/~sexybali/index.html ■平田恵子さんのコラムは毎月数回発行のINJメールマガジン（INJメルマガ）にてご購読いただけます。購読ご希望の方は、住所、氏名（フリガナ）、電話番号、メールアドレスをinfo@injcc.comまでご連絡ください。登録完了後に発行されたINJメルマガからご購読いただけます。

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