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平田恵子の  ABC南風Vol. 6 Foto (フォト＝写真） |
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早朝の散歩が、ウブド滞在の日課だった。表に出て、「今日は、どっちへいこうかな？ 山あり谷ありコースか、犬いっぱいの村道か」と天を見上げれば光りはあふれているものの、まだ空気は熱せられておらず、湿気が肌にまつわりつくこともない。爽快である。なんとなく犬いっぱい方面に足を向け、大通りを曲がり脇に入る。と、「わぁ〜」、小躍りしそうになった。
興奮した手でカメラを取り出す私。緑濃い小道の奥まで、高さ5〜6mはある真新しい竹さお飾りが何本も立てられ、幾重にも重ったファンタスティックな光景が視界に飛び込んできたのだった。「そういえば明日がガルンガンだな、ラッキー！」。さっそく、通りの角に犬も寝そべっていたが「犬よりペンジョールがいっぱい！」だった。
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ペンジョールは、ガルンガン（バリ暦による先祖迎えの重要な祭礼で、10日後には先祖送りの祭礼クニンガンがある）に準備される大切な祭礼飾りで、先祖が天から自分の家に戻ってくる目印に門の前に立てられる。カタチは天と地を自由に往来できる龍を表す。 しなった胴体に背びれっぽい装飾がほどこされているのが、心憎いばかりだ。そして竹のてっぺんからは、やしの葉で編んだ飾りものが垂らされ、これが宙でゆらゆらと揺れるという優美さなのだ。竹、やし、稲、野菜などと、父母をあらわす黄色と白の布を使って、手作りするペンジョールは家々でカタチが違っている。35日間立てられているそうで、次第に乾いて枯れた色になってゆくのだが、できたては青々として生気に満ちている。 私はドラゴン・コレクターでもあるのだが、ペンジョールのえもいえぬ神秘さに惹かれており、昔からこれのあるバリの風景が大好きなのだ。「やっぱり、稲を使っているとゴージャスだな」とか「房は長い方がおしゃれだな」とか "Kurang bagus, ya. Rumah ini tidak begitu baik. （手抜きだな。困った家だな〜）" など思いつつ、パチパチ写真を撮って喜んでいた。と、熱い気配を感じる方向に向き直れば、門の奥から子どもたちが顔を覗かせ、「Foto Foto.フォト、フォト」とつぶやいているのが分かる。自分を撮ってもらいたくて、たまらないのだ。 |
"Ayo, semuanya ke sini! （はい、はい、みんな、来て来て）" 私が声を掛けると、あっという間に数人が集まってきた。子どもたちは、はにかみながらもほっぺは紅潮し、それなりにポーズをとっている。写したデジカメの画面を、モニターで見せると、「あっ、ボクがここにいる！「あっ、マデは、ここだ」、とみな笑顔がより大きくなる。「ボクちゃんちのペンジョールはいいね〜」私がいうと、５歳くらいの子が、こっくりと頷いた。
散歩を終えて、朝ご飯も済んで紅茶でくつろいでいたら、なんだか私も、すでに天国の住人である両親に会いたくなってしまった。バリで撮った傑作写真を見せて、よもやま話をしたくなった。
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