朝早くから日射しはまぶしく、路上に置かれたチャナン(お供え)は、干涸びかけていた。ぶらぶらと村を散歩してやってきたパサール前の駐車場を横切っていると、プラスチックばけつの中でなにやら動くものがある。
クックと小声で鳴いている羽艶もよい生きた鶏3羽、お供え用の花びらと香草、やし油1瓶が、無造作というかきっちり持ち帰り状態にあったのだ。「あらま、買われちゃったのね、キミタチ(Ah!
Sudah dibeli, ya!)」と顔を覗くと、うちの利発そうな1羽と視線があった。トサカもあざやかで、目も澄んでいる。すぐに「あ!」。
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この日は、ガルンガンという先祖迎えの最重要な行事の2日前。 日本でいうと「盆」行事にあたり、バリ島では「ガルンガン」と「クニンガン」という盆行事がある。祖先の霊がこの世に降りて来る日がガルンガンで、しばらくこの世に滞在し、クニンガンの日にまた天国に戻っていく。
そういえば、道すがら、なんとなく多くの人が、脚を縛った鶏をぶら下げて歩いていたワケではある。ガルンガンの祭礼料理に、アヤムは欠かせない。(日本のお正月におせちが必須であるように)つまりは、48時間以内に、とびきり新鮮でおいしいayam
panggang(ロースト・チキン)かsate ayam(焼き鳥ピーナツソース添え)、lawar
ayam(削ったココナッツ、野菜、肉を和えたもの)などの祭り料理になってしまう運命なのだった。油もたっぷりあるから、gorengan(揚げ物)にもされるのだろう。
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逃がしてやりたくもあるが、そうもできず、足を止めている私を、光の中でおかっぱ頭の女の子が見つめていた。それにしてもバリ島の人口は約300万人、島民の90%がバリ・ヒンズー教徒で、ガルンガンを盛大に祝う。ということは、いったい何万羽のアヤムが昇天するのだろうか?神聖なるガルンガンも、アヤムにとっては最大の厄日かもしれない。
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