ABIS INDONESIA!
MAYUMIの★だって、インドネシアなんだもの★


No. 3 UPACARA POTONG GIGI (削歯儀礼)

■今回のフレーズ 
Ada upacara dalam waktu dekat? 近々、儀礼はありますか?

■関連単語
upacara         :儀礼
upacara pernikahan   :結婚式
odalan         :寺院創立記念祭
upacara ngaben/kremasi:火葬式

■一口メモ
upacara potong gigiのpotong gigiは、歯(gigi)を切る(potong)という意味。実際に、歯を切り落とすことはできないので、削ることになる。

■MAYUMIのコラム
私が初めてバリを訪れたのは大学三年の春休みでした。「講師紹介」でも触れましたが、大学の講義でバリの文化を学び、実際に自分の目で見てみたい、と思ったのがきっかけです。十日ほどの短い旅でしたが、非常に中身の濃い旅となりました。というのは、結婚式と成人儀礼、そしてニュピ(バリのお正月)を体験できたからです。

初めてのバリで、現地に知り合いもいなかったわけですが、宿泊先のロスメン(民宿)の兄ちゃんが親切にいろいろと教えてくれました。ニュピの前の、海岸での儀礼に誘ってくれたのも、結婚式の現場に連れて行ってくれたのも彼でした。「結婚式、見てみたい?」と聞かれて、私は「見たい!」と即答していました。

結婚式は宿のすぐ裏の家で行われました。結婚式と同時に成人儀礼である削歯儀礼(upacara potong gigi)もありました。削歯儀礼とは、犬歯などのとがった部分を削って平らにする儀礼です。この儀礼を経て、晴れて大人となるわけですが、結婚式のときにあわせて行われることが多いのです。


屋敷内の式場。色とりどりの供え物が置かれています。
 Tシャツに腰布と帯だけ巻いた格好で式の会場に入りました。会場といっても屋敷の中庭です。私を連れてきた兄ちゃんは、「じゃ、好きなだけ見てていいよ」と言って、どっかに行ってしまいました。てっきり一緒に参列すると思っていたのに、置き去りにされてしまいました。見知らぬ人々の中でひとり椅子に座って、式が始まるのを待ちました。周りの人が不思議そうに私を見ています。その中で、私の前に座っていた高校生くらいの男の子が話しかけてきました。
「どこから来たの?」
「日本だよ」
「名前は?」
「まゆみ」
「インドネシア語できる?」
「できない。英語なら少しできるよ」
「・・・・・」
「・・・・・」

あっという間に会話が終了してしまいました。やりとりは英語でした。当時、私はインドネシア語が全くできず、知っている単語と言えば、Terima kasih.(ありがとう)とSelamat pagi.(おはよう)くらいでした。 


さて、式が始まり、最初は削歯儀礼からでした。バリの屋敷には、必ず儀礼用の東屋がありますので、そこで行われます。私も東屋に上がりしばらく見せてもらうことにしました。まずは、女の子が仰向けに横たわりました。祭司らしき人が、あまりピカピカといえないやすりを女の子の歯にあて、ごりごりとやり始めました。やすりをかけると頭が揺れるので、身内らしき女性が頭を抑えていました。歯を削られてる女の子は泣いていました。別の女性が女の子の脇に座り、涙を拭いてあげています。話によると、歯を削るときはかなり痛みを伴うようです。私の知り合いも儀礼の後も一週間は食べるとき痛くて大変だったと言っています。
成人儀礼を受ける子は全員で五人でした。一人にかける時間は長く、削っている様子も座席からはよく見えないので、だんだん飽きてきました。ずっと東屋に上がりこみ覗き込んでいるのもどうかと思い、一人目の途中で、自分の席に戻っていたのでした。それから二時間ほどしたころでしょうか。宿の兄ちゃんがようやく戻ってきたので、一緒に帰ることにしました。私は思いがけず削歯儀礼が見れて大満足で宿に帰りましたが、ふと気づいたら結婚式はほとんど見ていませんでした。このとき以来、ほぼ毎年のようにバリに行っていますが、結婚式も削歯儀礼も見る機会を得ていません。公の場で行う葬式と異なり、屋敷の中で行われる儀礼の場合、一般の旅行者はなかなか目にすることができません。あのとき、もう少し粘って最後まで見ておけばよかった、とちょっと後悔です。

削歯儀礼を受けた五人。花嫁三人に花婿二人? 
数が合いませんね……。
一人は削歯儀礼にだけ参加したのでしょうか。

皆さんも儀礼を見る機会があったら、ぜひ参加してみてください。宿泊先のスタッフや知り合ったバリ人に“Ada upacara dalam waktu dekat?(近々、儀礼はありますか)”と聞いてみるのも手です。寺院創立記念祭(odalan)や火葬式(upacara ngaben)なら旅行者でも見学しやすいと思います。また、今年は6月27日が日本のお盆にあたるガルンガン(Galungan)、7月7日が、ガルンガンでこの世に戻ってきた祖先を送り返すクニンガン(Kuningan)の日にあたります。バリ人にとってはニュピと同じくとても大切な儀礼です。これらの儀礼のためにバリ中が大賑わいとなります。この時期にバリを訪れる予定のある方は儀礼の雰囲気をぜひ楽しんできてくださいね。

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